月の騎士の戯言

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zoom RSS フロスト始末

<<   作成日時 : 2018/09/16 11:27   >>

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本作は「フロスト警部シリーズ」の最終作であり、R.D.ウィングフィールド(故)の遺作である。






物語はイギリスの片田舎を舞台にし、面倒な事件に立て続け巻き込まれる
フロスト警部の活躍(というよりもひたすら舞い込む苦労)を描いている。
シリーズ一覧は以下の通り。(発売作品順)

・『クリスマスのフロスト』
・『フロスト日和』
・『夜のフロスト』
・『フロスト気質(上・下)』
・『冬のフロスト(上・下)』
・『フロスト始末(上・下)』

全て読んで気付いた。海外ミステリのシリーズものを全巻読破したのは
シャーロック・ホームズ以来かもしれない。
小説としての趣はまったく別物だが、イギリスを舞台に怪奇事件が起こり、
主人公が変人の厄介者ながら憎めず、人を引き寄せるカリスマ性を持つ、
といった共通点もある。更に閑話休題としては、「ショーンオブザデッド」という
イギリス作のゾンビ映画も面白かったので、実はイギリス的な感覚は
密かに自分と合っているのかもしれない。


ストーリーは独立しているので、どの作品からでも読んでも問題はないが、
やはり第1作から順に読んだ方が、世界観を身近にして楽しめるだろう。
未読の方が興味を惹く、あるいは敬遠できるようにフロスト警部で
必ず起こる「お決まりの10カ条」を並べておく。

・奇怪な事件が短期間に立て続けに起こる
・必ず未成年が事件に巻き込まれてしまう
・デントン警察署(フロストの勤務先)のブラック企業っぷりがすごい
・必ずフロストを疎ましく思う警察官が登場する
・フロストが寝ようとする=何かが起こって出勤となるフラグ
・フロストにとってブラックジョークが男性への挨拶
・フロストにとってセクハラが女性への挨拶
・フロストの鮮やかな推理による事件解決は起こらない
・無慈悲な結果や後味の悪い顛末が多々ある
・でも作品のどこかに1つはホロリと来る良いシーンがある

これだけ決まっているとワンパターンに捉えられるかもしれないが、
「これでこそフロスト!」とクセになり、似たパターンに味わいを感じる。
そう感じるのはシナリオもさることながら、素晴らしい翻訳のおかげだろう。
海外ミステリ(翻訳版)として郡を抜いた読みやすさ、分かりやすさに加え、
絶え間なく繰り出されるフロストのイギリスジョークを的確な日本語に
当てはめてくれるので退屈しない。翻訳の凄さだけでも一読の価値ありだ。


もう一つ、個人的に面白いのはデントン警察署のブラック企業っぷりだ。
イギリスの社会や風土を全く知らないので、読む前は勝手にイギリスへ
貴族的で優雅なものを想像をしていたのに、何のことは無い。
フィクションとはいえ、デントン警察署の方針や面々は
日本のブラック企業となんら変わらずストレスに満ち溢れている。
部下の手柄だけ奪い取って嫌味を言うばかりの上司や、
自分の都合しか考えない同僚や、ヘッポコの極みな部下のお守りによって
フロストは常に大忙しで、1日に平気で20時間勤務ぐらいしている。
なのに残業手当ては出ず、最低の評価をされる始末。

極度の仕事中毒であるフロストは自分の状況に罵詈雑言をはきながらも
事件に向かっていくのである。その姿は、社会の歯車になって
馬車馬のように働くしかないサラリーマンとなんら変わらないのだが、
なぜか少し楽しそうにも思えてくるのが、フロスト警部の長所だろう。
ブラック会社で生きる人は見習いたいメンタリティだ。

そんなフロスト警部の事件捜査は、おどろくようなトリックや、
聞いて驚きの推理が披露されるわけでは当然ない。
どこまでいっても泥臭い捜査で、沼の奥から証拠を無理やり引きずりだして、
時には法律違反スレスレ(ほぼアウト)をして、ようやく偶然にも犯人にたどり着く。



さて、最終作「フロスト始末」でも、10カ条は当然守られている。
最終作だからといって、ルール違反はない。
しかし、過去作でも冗談半分ながら立場が危うくなっていたフロストが、
今回ばかりは本当に左遷の危機に陥ってしまうところがポイントだろう。

新キャラ上司は、いけ好かない上司マレットに輪をかけた
嫌味と傲慢さでフロストをとことん追い詰めようとする。
当のフロストはいつもの様に、次々増えていくトラブルに頭を抱えながらも
すべての事件に向かって、ひたすら体当たりしていく。

本の75%を読み終わっても、事件解決の兆しがほとんど見えないのだから、
やきもきしっぱなしであった。それでも水戸黄門が印籠を出せば
何とか場が収まる様に、この物語は、フロストが大立ち回りを
すれば最後はどうにかなるのだ。

「フロスト始末」でホロリと来る名シーンは、フロスト警部が
自宅で妻と過ごした日々を回想するシーンだろう。
外では下品で粗暴に振舞っていても、フロストにも悲しい過去と
忘れられない思い出があるのだ。


最終作だと思うと、お決まりな場面も読み進めるのが惜しく思えた。
しかし、オチや事件のトリックではなく、フロストを読む目的であれば、
数年経てばきれいさっぱり細かいことは忘れて、読み返しても面白いだろう。
フロスト節を味わいたくなった頃にまた手に取りたい。

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