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zoom RSS 少女漫画探訪(スペシャル) 第46回:逃げるは恥だが役に立つ(完結編)

<<   作成日時 : 2017/03/25 13:57   >>

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2016年一大ムーブメントを起こしていた漫画の完結編です。(いつもより長文でお届けします)





2016年にドラマ化され、社会現象とも言える大ブームになった漫画なので、
読んだことはなくても知ってる方は非常に多いかと思います。
実は当ブログで、大ブーム化される前に感想を書いていたのです。
少女漫画探訪 第18回:逃げるは恥だが役に立つ

せっかくブームになってるので、ドラマが始まる直前か、ドラマの最中に
感想を書こうとも考えながら、完結(最終巻発売)の目途が見えてたので、
ずいぶん引っ張りました。しかし、このタイミングで感想を書けたのは
結果として良かったと思います。その辺りの話は後で詳しく書くとして、
完全な自己満足ながら、最初にこれだけは言わせてください。

当ブログは2年前から逃げ恥推しでしたよ!!

決して後追いではなく、あの時点から予言していたとドヤ顔させてもらいます。
昨年のブームも流行るべくして流行ったと、したり顔でドラマを見ていました。
…正直言えば、こんなにもめちゃくちゃ流行るとは思ってませんでしたけど。


なぜこれだけ流行ったのか。ざっと挙げれば次の3つでしょう。

@描かれている主題のテーマ(契約結婚)が興味深い
A俳優・女優の知名度があり、配役と演技もハマった。
Bエンディング曲と恋ダンス

どれもがバランスよく好循環を生んでいました。
漫画を読んで面白いと知っていたから見たのもありますが、
それだけだったら1話で満足し、続きは見なかったかもしれません。
普段はドラマを見ない男でさえ、次の話も見たい!と思わせる
パワーがありました。普段からドラマを見てる層に加えて、
そういう層も取り入れたからこそ爆発的にヒットしたんじゃないかと思います。



ただ、1つだけ江頭2:50ばりに物申したいことがあります。
このドラマ(漫画)を「ムズキュン」と称して、そこばかり評価するのは、
正直どうなんだい!?と思うのです。

「ムズキュン」とは、みくりと平匡のお互いにすれ違ったり、
思いあったりのやり取りに対して、ムズムズしながらも、
その溜めから来る愛おしさを表現しているのでしょう。
それはもちろん作品の魅力だとは思うし、それを素敵と思う人もいて構いません。


が、「逃げるは恥だが役に立つ」の本質的な面白さは、
もっと別にあるんじゃなかろうか!…と言いながら、
それもあくまで私の見立てであって、楽しみ方は自由であっていいので、
こんな見方もあるんだなと思ってもらえれば幸いです。
そもそも公式ツイッターでも「ムズキュン」と宣伝されていたらしいので、
難癖以外なにものでもないでしょう。あえての問題提起です。

尚、ドラマは完結してる&最終巻まで発売されてることから、
以降の感想は多少のネタバレを含んだ内容になっています。
もし、これから漫画を読んで一から楽しみたい方は、
ぜひその後にでも読んでいただければ幸いです。

これらもいわゆるひとつの逃げ口上。まさに「逃げるは恥だが役に立つ」ですよ。



前提として、ドラマしか見てない人にとっての逃げ恥はドラマティックな
エンターテイメント作品に思われてるかもしれません。
しかし、漫画はどちらかといえば、社会的な会話が中心で淡々としています。
ドラマ以上に赤裸々で現実的な悩みにもツッコミますし、みくりの内面は時折
平匡以上にドライで現実的だったりします。ドラマしか見てない人には、
それをマンガならではの面白さと捉えてもらいたいです。

さて、初期の巻末に作者さんが「この漫画を恋愛漫画と見るか、
社会漫画と見るかで変わってくる」と書かれていました。
まさにその通りで、本作は恋愛漫画の呈をなした社会風刺でもあり、
社会派と見せかけた正統派少女マンガでもある
のです。



社会派マンガの観点では、みくりは高学歴でも正社員になれない
派遣社員として悩みを抱え続け、家事代行サービスで収入を得ながら、
奇抜なアイデアで様々なことを発案します。その一つが契約結婚です。
平匡は安定した社会人として成功しながら、職場の縮小を機に転職し、
合理的かつ雇用主として信頼できる考えで、みくりの家事代行サービスを
やりがいがあって、働きやすい職場に作り上げていきます。

これを結婚=就職、家庭=企業、夫=雇用主、妻=従業員と捉えた場合、
常にそれぞれの立場を考えた、すばらしいホワイト企業になっています。
まず、こういう結婚がしたい!と思うよりも、こういう企業に就職したい!と
思う人が多い
のではないでしょうか。


とはいえ、男女がひとつ屋根の下に住むのは単純なものではありません。
徐々に二人は契約だとか役割だとかでは割り切れない想い、
つまりは「恋」が芽生える関係になっていきます。
ある日突然の偶然でひとつ屋根の下で暮らすことに!?
というのは、少女マンガで古来より書き続けられてきた
永遠のテーマですから、それを機に意識するのも王道な展開といえます。

二人の意識が変わると、万事上手くいっていた雇用関係が崩れます。
職場としては適切で正しいことでも、一方の想いだけが先走って
ギクシャクしてしまうことになりました。で、そうなったからには、
「じゃあ、ここからはただの恋愛関係になりましょう!」で終わらないのが、
本作の面白さです。そのような感情の問題すら社会的・合理的に
「契約の変更」だったり「システムの再構築」で解決させてしまう
のが目から鱗です。


それはドライな様で、みくりと平匡流の照れ隠しも含まれていると思います。
お互いに素直な感情を伝えるのがわりと苦手だからこそ、そうやって表現することで、
伝えようとしてるんじゃないでしょうか。そして、それを楽しんでいる。

前半はみくりが業務外のスキンシップを求めがちなのを、
平匡が頑なに拒否しました。後半は平匡が恋は盲目で暴走になりがちなのを、
みくりがストップかけました。そのようにして、お互いに補っていく関係から、
最後は二人で暮らしながらも、「感謝」の精神で接することで、
仕事(お金)で割り切れない部分を消化するに至りました。

これって、仕事(就職)にも言えることで、ある程度は賃金だったり、
職場環境で満足できるし、それに重きを置いて選ぶのも当然の流れです。
でも最終的に長く働けるのか、自分が納得して働いていけるかどうかは、
信頼関係が成り立った上での「感謝」があるかどうかは重要です。
ところがよくある最悪な例が、感謝だけを求めて賃金や環境を無視した職場で、
そういう企業に限って「うちは家族みたいなもの」とか「愛社精神があってこそ」
みたいなことを平気で言うのです。これは呆れるほどの勘違いだと思います。



さて、話を少女漫画視点に切り替えると、みくりと平匡の関係は
やはり「ムズキュン」と称するのが適切でしょうか。
これは前の感想でも書いてるように、そこいらのこなれた中学生より
ぎこちなさがあるので、それを楽しんでもらえれば。

二人の中では様々な変化があって、トラブルも多発していたにも関わらず、
事情を知らない周りからすれば、契約結婚した時点から最終話に至るまで、
何も起きてない(起きていても小さな夫婦間トラブル)様に見えるのも、
不思議で興味深いです。そして、世間体では夫婦として生活しているのに、
実際の生活ではハグ一つで極まっている逆転現象。
それが少しずつ、世間体と実際の関係が接近していき、最後は理想の…。
となるのが、本作のみくり・平匡の恋愛物語です。


ですが、実は真の少女漫画パートはゆりちゃんと風見だと思います。
ゆりちゃんは、50歳を過ぎて結婚どころか性行為もしたことがないながら、
社会的には女性として成功を収めている、いわゆるバリバリの
キャリアウーマンとして描かれています。で、そんな彼女のことを可哀想に
思うかといえば、全然そうではなく、むしろ素敵に思う人もいて、
ゆりちゃんファンは多いでしょう。最終巻に収録されている番外編なんて、
ゆりちゃんとは何の共通点もないような男が読んで、
モノローグの詩的で美しいことに、どういうわけか感動しました。

そのゆりちゃんは平匡の同僚であるイケメンながら結婚に興味がない風見と、
あれやこれやありながら仲を深めていきます。ゆりちゃん側は風見を
「仲の良い友達」で付き合っていければと考えていたようですが、
風見側はゆりちゃんを女性として意識し始めます。
こちらも、みくりと平匡とは違いますが、感情の変化によって、
関係が進展する(こじれる)ケースですね。ゆりちゃんは
自分と風見の年齢差に対する負い目があったり、いい大人になりすぎて
感情をコントロールできるが故の弊害を感じながら、
風見の想いに対して揺れ動き悩む様になります。


そして二人が出した結論は、「感情に流される」でした。
それはいつか結婚したいとか、二人で協力して社会生活を…とかではなく、
ただただ、互いを欲する「恋」であり「欲」に忠実な結論だと思います。
最初に結婚というゴールを迎えて、互いの意見を尊重しながら生活を考えて
関係を構築した、みくりと平匡の真逆です。
二人はそれぞれが独立できていて、生活に困ることも何もない。
けれど、互いに一緒に過ごす時間を心地よいと思い、恋を自覚してしまった。

つまりそれは、ゆりちゃんと風見の関係が、少女マンガどストレートなのです。
古今東西、いかなる障害があろうが、二人が恋してるんだから突っ走れ!
そこに社会的倫理がどうとかしゃらくせえ!とか、そういう類のものですね。
ゆりちゃんも風見もしっかりした大人なので、そういう風には見えませんが、
突き詰めればそんな感じだと思います。これもまた一つの形であって、
何が正解とかではありませんが、比べて見ると面白さに繋がります。



おまけで沼田さんについて。少女マンガのビジュアル的には不要だけど、
本作ではキーマンになっている重要なキャラです。
みくりと平匡に影響を与えたり、ジェンダー論としても一役買っていたり。
とかく作品のスパイスとして、事あるごとに顔を出しています。
あまり上司という感じではないし、面倒な癖も持っていますが、
もし職場にこんな人いたら愉快で和みそうですね。
日野さんとコンビで、居て欲しい職場の先輩格でしょう。

ドラマ版の沼田さんが言っていた染みる名言を載せておきます。

「仕事の半分は仕方ない。もう半分は帰りたい」

社会人のほぼほぼが、内心はそう思っているはずで、
なんとなく「逃げるは恥だが役に立つ」の諺に通じるものがある。
ある意味で、本作のこねくりまわした論理や理屈を無視してもいますが、
こういう事を心においた上で、仕事に向き合うことも大切ですよ。



ということで、長々と感想を書いてきましたが、
このマンガ(二人の関係)から学べる教訓は、仕事であれ恋愛であれ、
「固定観念に囚われず何かを変えてみれば上手くいく…かも?」だと思います。

最後に、自分自身にも照らし合わせてみます。
(話がリンクしていますので、できればこの記事も読んでいただければ幸いです)

かつては、平匡に近い考えを持っている時もありました。
突き詰めれば「一人は気楽だ」とか「どうせ傷つくからこれでいい」とか。
それは自由で楽であることには違いないけれど、同時に自己防衛が
強すぎた様な気がします。この作品に描かれてる様に、考え方や視点を
少し変えてみるだけで、頑なに一人に拘らなくてもやっていけるし、
それが案外楽しいことに気付いたりもできるのです。

本作を初めて読んだ時期から現在まで、どこかリンクした変化がありました。
みくりが小賢しいと言われたトラウマが払拭されたり、
平匡が一人で生きていかなくても誰かに心を許せることが分かったように。
とはいえ、一人ではその状況を打破しようとするキッカケもないし、
そうしたいとも思わないというか、気付かないというか…。
いろいろなタイミングが重なって、始めて次に進めるのだから、
結果的に考えを変えられるのであれば、それは「運がよかった」のでしょう。

ということで、私も運がよかったから「結婚」という形を考えられるようになりました。
その選択は何かに縛られて窮屈に生きるのではなく、むしろもっと自由に、
一人ではできないことを二人ではできる…かもしれない。という可能性です。
それはどういうことか……これ以上うだうだ説明するより、
本作ドラマの主題歌、星野源さんの「恋」を聴いてもらえれば、
それでもうだいたい伝わることでしょう!ということで、おススメ動画をどうぞ。

恋ダンス カイジver. featuringベジータ


本作の物語も自分の現実も「結婚してよかった」と言える場面は、先の話になります。
未来は分からなくても、この作品をあの時期から現在まで読めたことは、
人生教訓としても間違いなくプラスでしたし、それを抜きにしても大変面白く、
忘れられない作品になりました。

以上。何かに行き詰ったと感じた人は、この漫画を読んで考えをリフレッシュさせたり、
途中と矛盾しますが、難しく考えずに「ムズキュン」を楽しむでもいいと思います。
恥ずかしい逃げ方をしたっていいじゃないですか。また明日生きれますよ!

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ご無沙汰してます。
ロンリー卒業おめでとうございます!
フィーバーフィーバー

漫画の感想を拝見して、ホワイトな仕事ってなんだろう?という疑問を思い出しました。
ストレスがあるからお給料が出るわけで、ブラックな部分を他の人や他の会社、他の国に押し付けてるのでは?などと深みにはまります。
契約結婚の場合、家=職場なので逃げ道が…とか(笑)

何はともあれ素敵な家庭を築いてください♪
aki
2017/03/31 07:20
akiさんコメントありがとうございます。
ロンリー卒業によって、またブログにも新しい幅を
広げられるようにできたらいいなと思います。
お祝い下さいありがとうございました!

ホワイトな仕事…って定義は難しいですよね。
確かにただ楽で生産性が何もなければ、
普通は給与も出ないわけですし。
まあ、ブラック企業なんて言葉があるから
対義語として使ってますけど、本当はホワイトな仕事
なんてものはないのかもしれません。
あったとしても、心の持ちようでしかないのかも。

仕事論の目線で読むとまた良さが見えてくる漫画でした。
平匡の会社はブラックか?ホワイトか?という議論も
面白いかもしれません。
月の騎士
2017/03/31 22:07

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