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zoom RSS 戯言読書録  ニサッタ、ニサッタともう一冊

<<   作成日時 : 2016/12/17 16:03   >>

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どんな日でも、明日は必ずやってくる。







上巻のあらすじをAmazonより引用する。

転職した会社が倒産してしまった片貝耕平は、人材派遣会社に登録したがどの仕事も長続きせず、
担当者と喧嘩して辞めてしまう。アパートの更新もできなくなり、
一発逆転を夢見てギャンブルにのめりこんで消費者金融の
「回収担当」に追われる身となった耕平は、ようやく住み込みの新聞配達の仕事を見つける。


「ニサッタ」とはアイヌ語で「明日」を意味するらしい。
そのまま直訳すると本書は「明日、明日」である。
本書を読み終えて、その意味を考えると、まだ見ぬ明日への
希望を表してる様にも、無責任な明日へ投げっぱなしにした事の
罪を表してる様にも思える。


主人公の片貝耕平は、どこにでもいる悪人ではないけど善人でもない男。
少し要領が悪く、人生を適当に考え、日々を流れに任せて生きる若者。
物語の始まりは、曲がりなりにも会社に勤めてはいたし、
自業自得な面も多々見えるが、それにしても生きることに貧窮しなければ
ならない程の不幸に見舞われなくたっていい境遇に思える。

同じように、特別な自責がないのに気が付けば苦しい生活を送っている。
そんな若者は今時珍しくないだろう。フリーターや契約社員は
咎めるにも及ばず、ニートだのネカフェ難民だのも今や普通である。
今の時点では、まったく不自由なく暮らしている人だって、
何かをキッカケに同じ境遇に陥らないとか限らない。
いくら安定している会社に勤めていても、その会社が絶対に安全かは
分からない。いつ心が病んだり、嫌気がさして辞めたくなるか分からない。
いつ能力や人間関係の問題で、飛ばされたりクビになるかも分からない。
会社でなく自営業に勤める人にも同じ事が言える。

良い会社に入ったら、良い暮らしができて、良い家庭をもって
良い車を買い、良い日常を過ごし、老後も良いに決まっている。
そんな簡単でないことは、情報社会の今となっては当たり前の話で、
夢を見ることも簡単ではない。世の中には避けられない落とし穴があって、
それを自分だけは絶対に避けられると信じているのは、
思い上がりではないか。なんてネガティブに考えるのも普通のことだ。


本作を最後まで読み終えた感想は人それぞれだと思う。
1人の若者が都会で散々な目に遭ったが、田舎に帰ったら見事成功した!
という物語ではないから、純粋に心が晴れてスッキリするとは限らない。
それでも、これをバッドエンドと感じる人は少ないのではないだろうか。
キッカケは何であれ、決めた道は進んでいくしかないし、
運が悪かろうが良かろうが、前を向いて歩ける方が幸せだからだ。

以上のような感想を書いてしまうと、シビアな現実を直視させる、
リアリティに特化したお堅い小説だと思われたかもしれない。
そんなことはまるでなく、上下巻のボリュームを感じさせない文章の
読みやすさと、片貝耕平の飾り気ない言葉が雰囲気を軽くしている。
堅苦しさはなく、登場人物の境遇にのめり込んでいける小説である。



さて、この流れでもう1冊紹介する。




タイトルの通り、介護士からプロ棋士になった40代男性のノンフィクション
ルポである。・・・とだけ書くと、何がどう凄いのかよく分からないかもしれない。
簡潔に言えば、限られた人だけがなれ夢破れた者は消えるプロ棋士の世界で、
2度も壮絶な戦いの上に散った男が、将棋と全く関係ない介護士になったことで
心が鍛えられ、3度目の夢を掴むまでが書かれている。

今年の将棋界には、様々な話題があった。
良い方でも悪い方でも、一般的な注目を浴びたのは間違いない。
本書の話も、2年ほど前には多少の話題になっているのだが、
おそらく一般的には知らない人の方が多いだろう。
ともあれ、この話を知らない人も、将棋をよく知らない人も、
読めば元気が出る本であることは間違いない。肩肘張らずに読んでもらいたい。
「ニサッタ、ニサッタ」のような、やるせない現実にぶつかった話でもあり、
それとは真逆で、最初から最後まで『将棋』に生きる希望の話でもある。
ノンフィクションな「ニサッタ、ニサッタ」として読めてしまった。



両本の共通点は、たとえ悲惨で不幸で、ズタズタになった内面であっても、
隠さず伝える文章や、率直な感情がまっすぐ書かれていることだ。

2016年はもう少しで終わる。
良いことがあった人も、悪いことがあった人も、最後はこういう本を読んで
「明日」を信じて生きていければ、前を向けると思い紹介した。

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