月の騎士の戯言

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zoom RSS 戯言読書録 代償

<<   作成日時 : 2016/11/19 11:51   >>

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一気読み必至のクライムサスペンス。


著者 : 伊岡瞬
KADOKAWA / 角川書店
発売日 : 2016-05-25



あらすじをAmazonより。

平凡な家庭の小学生・圭輔は、ある事故をきっかけに遠縁の同級生・達也と暮らすことになり、
一転、不幸な境遇に陥る。寿人という友人を得て苦境を脱し、
長じて弁護士となった圭輔に、収監された達也から弁護依頼が舞い込んだ
“私は無実の罪で逮捕されました。どうか、お願いです。かつての友情に免じて、
私の弁護をしていただけないでしょうか”。裁判を弄ぶ達也、追いつめられた圭輔。
事件を調べ始めた寿人は、証言の意外な綻びを見つけ、
巧妙に仕組まれた罠をときほどいてゆくが―。



本書は二部構成になっている。
第一部はあらすじの2行目までの話。
主人公の圭輔が達也に出会い、どん底に叩き落され、
自分の境遇に絶望するまでが描かれている。

第一部は読んでいて、どうにも可哀想になってくる。
圭輔の家族は特に何かをしたわけでもないのに、生活を乱す怪物が
遠縁でありながら近くに住んでいるだけで訪れた不幸。
その追い詰められていく様子が子供の視点で無慈悲に描かれているのだ。
子供である圭輔には成す術なく、ひたすら達也に自分の居場所を奪われていく。

達也の振る舞いには、読んでいて不快になる人は多いだろう。
それは、この物語ほど極端な例ではなくても日常生活で
自分が陥る可能性がある、想像したくない共感から来る不快と思われる。
例えば、隣に毎日騒音をまき散らす迷惑な隣人が引っ越してきたとか、
職場にいちいち仕事やプライベートに口を出す輩が現れたとか。
大人になってでさえ、望まない何かに生活が汚染されることは
程度の差こそあれ、珍しいことではないのだ。
それが子供であれば尚更自分の意思では逃れられないし、
家ぐるみの関係になってしまえば、絶対的な呪縛である。

達也は分かりやすい腕白で暴力を振るうような不良ではないのも、
嫌悪感を助長させる要因になっている。思春期の一時的な粗暴さではなく、
狡猾に周囲を支配し、手を汚さずに美味しい蜜を吸おうとする。
読み進めるほどに、「相容れない人種」であることが伝わるのだ。



第二部は、あらすじの3行目から先の話になる。
その後、大人になって一旦は切れたはずの関係が、
再び弁護士と被告という関係になって再会することに始まる。

紆余曲折ありながら、被告を弁護しながら心では有罪を望む弁護士と、
裁判をダシにし、弁護で遊んでいるような被告の頭脳戦が始まる。
第二部からは一転して、法廷サスペンスを交えたミステリとして、
『達也の目的は何か』を調査し、推理する物語になっている。

二人の関係はあっさりとした説明だけに終始して、
いきなり第二部から物語を初めても、ミステリとしては悪くない。
しかし、第一部の『不快感』があるからこそ、達也が善意で弁護を
依頼したわけでも、自分の無実を心から証明したいわけでも
ないことが直感で分かり、サスペンスとして完成している。
何か仕掛けがあるはず。何か裏があるはず。と察することから、
物語を深読みし、緊張感が増していく様に読者は感じると思う。



以上、解説してみたが、ともかく本書は一気に読んでしまう面白さがあった。
第1部は徹底した不快感の「嫌なもの見たさ」で読んでしまい、
第2部は心理戦の果てに訪れる関係の結末を知りたさに読んでしまう。
この一気読みできる感こそ、サスペンス小説の醍醐味だろう。
ちなみに、タイトルの「代償」とは誰にとって何の「代償」であるのか。
最後まで読めば判明する。…ということで、読みたさを助長させておく。

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