月の騎士の戯言

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zoom RSS 戯言読書録 オールラウンダー廻

<<   作成日時 : 2016/06/18 12:57   >>

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総合格闘技漫画の金字塔を完結記念に語る。




打ち込めるものを探している高校生の高柳廻は、
かつて空手を習っていた経験からなんとなく修斗を始める。
半年ほど経ったある日、半ば強引に出場させられたアマチュアの大会で、
幼馴染の山吹木喬と偶然に再会する。修斗にそれほど打ち込んでいなかった廻だが、
喬の修斗に対するストイックな姿勢と厳しい言動に触発され、
徐々に修斗に対してまじめに取り組んでいくようになる。


何巻だったかカバー裏の作者あとがきに「本作は努力・友情・勝利がテーマ」
と書かれていた。そういうジャンプ的な三拍子に嫌気がさして何年経ったか…。
ジャンプを愛読していた少年達が大人になって通ることがある
「努力・友情・勝利」アレルギー。その病魔にかかっていた事を思い出した。
あまりにできすぎた美談にウソ臭さを感じたり、
自分の置かれた現実との圧倒的な格差にめまいを覚えたり。

読んでいても前半は、特にそれがテーマとは思えなかった。
努力が才能に勝てない描写はあるし、友情というにはドライに見えるし、
勝利は絶対なものではない。何より全体的にその3つを
刎ねつけているような、ちょっと薄暗い雰囲気があった。
ところが最後まで読み終えると、間違いなくそのテーマが描かれていた
ことを納得できた。「努力・友情・勝利」にも様々な側面があるのだ。

努力=迷いなくひたすら頑張ることではない
友情=仲睦まじく親しくなることではない
勝利=ただ試合で勝つということではない

ありきたりな「努力・友情・勝利」にアレルギーを持ってしまった大人も、
熱中して読める物語である。



このマンガ、格闘技を知らない人にも読んで欲しいとは思うが、
格闘技を知っていて好きである人が読む方が面白いのは事実だろう。
総合格闘技特有の技術論や、とっつきにくいルールも真正面から
描かれているため、最初から覚えることを放棄した人にとって、
試合風景は他の格闘技漫画よりもガチャガチャして見えるかもしれない。

しかし、分かる人、身近な人ほどそのリアリティが共感と感動を呼ぶ。
なにせこの漫画は、世界最強!という分かりやすいロマンではなく、
ある人にとってはプロの登竜門、ある人にとっては生活や趣味の延長上、
スポーツとして「アマチュアの総合格闘技」を描いている。

登場人物は皆が等身大だし、それぞれが抱えてる事情も
大小の差はあれど、理解して想像できる範囲のものである。
1人が1人が格闘技に取り組むことで見えてくる、戦う意味や背景を
丁寧に描き、そして結果として淡々とした勝敗がついてくる。
誰かひとりに感情移入するというよりも、「格闘技」の全体像が描かれている。



全体像の中から、廻と喬、二人の少年にスポットを当てる。
二人とも家族事情が少々複雑という共通点はあるが、
成長しながら目指す生き方は真逆であった。

廻は器用貧乏的な側面を見せる。
何か一つに秀でているのではなく、何でもある程度出来るタイプ。
それが別のスポーツだったら「地味」の印象になるのだが、
総合格闘技の世界では、ストロングポイントになる。
普通に生きる幸せを望み、格闘技に命をかけるのではないが、
総合格闘技というスポーツを楽しむ様子で、強くなっていく。

喬はストロングポイントを徹底的に詰める。
格闘技を生活の糧とすることを決め、アマチュア格闘技は
通過点に過ぎず、その先に世界を観ている。
普通や楽しさは望まず、特別に在ろうとして生きている。
だからこそ、普通であろうとし、幸せを望む廻には
絶対負けられない、負けたくないライバル心を持っている。

廻と喬、それぞれが選んだ道は大人になって交わるかもしれないし、
交わらないかもしれない。一つ言えることは、今の総合格闘技は、
世界を目指すにしろ、趣味として楽しむにしろ、その敷居は高く、
マイナーの域を出ていない。この漫画はそんなマイナーな世界に
足を踏み入れて深入りした少年二人の因縁と交流を描いている。



そして、読者的な裏主人公は神谷真希だろう。
長身のキックボクサー女子で、言葉や態度は乱暴だが心は乙女。
この漫画で、誰よりも王道の少年漫画っぽく在りながら、
正統派のヒロインらしさも見せた、アイコン的なキャラであった。
それぞれのアンニュイな事情が垣間見える場面であっても、
神谷真希が介入することで、コメディとして成立している。

それにしても最終19巻の構成には度胆を抜かれた。
前半は総合格闘技漫画としてのクライマックスが描かれ、
後半はその先にある日常の風景によって幕を閉じた。
それだけでも十分であるのに、最後のおまけで徹底的な下ネタ攻撃。
作品内で描かれた話が、遠いどこかの空想ヒーロー譚ではなく、
身近な高校生の性事情であったことに落ち着いたのだ。



完結に際し、改めて最初から最後まで通しで読んでみて、
なんだかんだ総合格闘技が好きで、たとえ試合をしたことはなくても
見た記憶の原体験として、格闘技は自分の青春であったと感じた。
個人的な人生の漫画ベスト10にランクインするのは間違いない。
オールラウンダー廻、今を生きる高校生男子にオススメしてみたい。

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