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zoom RSS 戯言読書録 さよならの手口

<<   作成日時 : 2016/05/14 08:45   >>

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探偵になりたいと思った少年少女、今は普通に生きる大人に捧げて。


小学生の時、初めて名探偵コナンを観て、
シャーロック・ホームズを読んで以来、
小学校を卒業するぐらいまでの間、探偵になりたかった。
それがちょっと(かなり?)恥ずかしいことは分かっていたので、
当時は誰にも言ってないし、将来の夢などの欄にも書いてはいない。
それでも一時期、猛烈になりたかった事は記憶に残っている。

探偵になりたかったといって何かをしたわけではない。
仮に目指したとしても、名探偵コナン(工藤新一)やホームズのような
探偵になるには、どうやったって無理がある。ありすぎる。
現代の日本探偵は、あんな風に警察の事件に当たり前に介入し、
大勢の前で推理を披露し、挙句に犯人を捕まえるなんて場面は、
どうやったって出くわさないないだろう。仮に出くわしたところで、
事件を解決できる能力なんて普通はない。

子供でもそれぐらいは分かっていたし、成長するにつれて、
血まなぐさい事件に巻き込まれるのは正直嫌だと思い、
ミステリーやサスペンスはフィクションで楽しんでこそと悟った。
そうして覚めていく内に、探偵になりたい気持ちは雲散霧消となった。
しかし、将来の夢でなくなり、想像で描く探偵が全てフィクションと分かっても、
『探偵』という響きには今でも妙な憧れがある。



そんな、探偵には特別なイメージを持ってる事を前置きにして、
今回紹介する本は、純粋な探偵小説である。





本書は若竹七海氏が描く女探偵、葉村昌シリーズの最新作である。
前作「悪いうさぎ」から十数年ぶりの新作となっている。
なんて書くと、昔からのファンだと錯覚されると思われるが、
葉村昌を知ったのは今年に入ってからで、
前作「悪いうさぎ」を知って読んだのも、つい最近の初心者だ。

ちなみに本作は前作を読んでいなくてもまったく問題ない。
読んでいれば、繋がりのあるちょっとした描写にニヤリとできるぐらいだ。
十数年待った感慨や、特別な思い入れはなくても面白かった。



本作の主人公である葉村昌には、名探偵コナンのような
これといった能力はない。だから子供が読んでも憧れる探偵ではない。
しかし、探偵としては有能である。おそらく現実世界で探偵を職業に
している人が読んでも「有能」と言うのではないかと思う。

有能であるが、不幸で不運で世渡りも上手くなく、
おまけに率直な物言いをするため、体も心も無傷では済まない。
トラブルで体のあちこちを痛め、関わる人に罵詈雑言を浴びることは
日常茶飯事である。毒舌的ユーモアを交えながら、調査する様は
良く言えばハードボイルドなのだが、泥臭いといった方が似合っている。


本書でもたびたび生活感が溢れすぎる描写や、
自分を自虐的に表現する描写が数多くあり、
それらは社会で普通に仕事をして生きている人にとって
共感できるものだろう。葉村昌は一般人と変わらないのだ。
一般人としての主婦でもOLでもなく、「探偵」というだけで。

お世辞にも女性の生き方として美しいとは言い難く、
探偵としてカッコ良いとも言い難いが、右往左往しながら、
迷いながらも調査に向かうその姿勢は、立派な生き方だと思う。
大人になった今となっては、超人的な能力で事件を華麗に解決するよりも、
泥臭くても地道に真相に近づいていく方に味わいを感じてしまう。
名探偵コナンのような探偵よりも、葉村昌のような探偵の方が
正直好きになってしまっている。これは大人になった感覚なのだろうか。


本作のストーリーに少しだけ触れる。
物語の始まり、葉村昌は諸事情により探偵ではなく書店のアルバイト店員
として事件に巻き込まれ、そこから派生して十数年前に行方不明となった
女性の捜索を依頼される。そして、周囲の協力と邪魔を受けながら、
過去を遡っての調査がされていく。

果たして結末はどうなるか。ネタバレ承知で言えば、事件は「解決」する。
しかし、その解決は大勢の要人が揃う場で犯人を見事に突きつけ、
犯人が涙ながらに自供して、一件落着する類のものではない。
そこには一片の甘さもない。さりとて後味の悪さは残らない。
葉村昌が全力で調査した過程は仕事を全うする探偵としての魅力に溢れ、
彼女が調査する事件の物語をまた読みたいと感じた。

時代や趣向が変わっても、なぜか変わらない探偵へのリスペクトがある。

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