月の騎士の戯言

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zoom RSS 少女漫画探訪 第32回:八雲立つ

<<   作成日時 : 2015/12/01 00:34   >>

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太古ファンタジー的シャーマンロマン譚の少女漫画です。


2015年も12月を迎えました。皆さんいかがお過ごしでしょうか。
最近は土日投稿が当たり前になってましたが、
今日は訳アリ(はっきり言わないシャイなアンチクショウ)で投稿します。
遂に20代もこれで最後の1年という事実には震えが止まりませんが、
それ以外は心身共に健康ですので、どうぞご安心ください。

今年はいろいろあって、ありすぎました。
時間と気力さえ許せばブログに書けるような話はいくらでも
あったはずなのに、実際にはほとんど反映できず、
根強くご覧いただいた皆様には、ご期待に添えない形が続き
申し訳ございませんでした。
10年はやっぱりいろいろと区切りなんですね。

それでもこの「少女漫画探訪シリーズ」に関しては、
毎月1回の投稿を休まなかったことがせめてもの達成感です。
2016年はどうなることかまだ全然分かりませんけど、
出来る限りこのシリーズは続けていきたいと思います。

それでは今年最後の少女漫画探訪シリーズになります。
2015年のトリは、すべての原点回帰としてあの『LaLa』より、
不朽の名作(といってつい最近まで知らなかった)をご紹介します。






長いですが、wikiより物語の導入部を引用します。

東京に暮らす普通の大学生七地健生は、ある日大学の先輩から頼まれた
舞台取材同行のアルバイトで島根県・維鈇谷村(いふやむら)にある
道返神社(ちがえしじんじゃ)を訪れる事になり、折角の機会だからと家族に持たされた
代々七地家に伝わる飾太刀をこの神社に奉納しようと思いやってくる。
この時、道返神社では次期宗主である布椎闇己の為の秘祭・神和祭(かんなぎさい)が行われていた。
本祭の夜、意図せず禁域に迷い込み、祭りの最終儀式を覗いてしまう七地。
その眼前で、闇己は宗主の証である神剣・迦具土(かぐつち)を前宗主の海潮から受け取り、
そしてある使命を告げられる。その使命とは、1700年もの間布椎家が代々封印を
守ってきた古代出雲族の怨念を昇華させる為、戦時中の混乱に乗じて道返神社より
盗まれた残り6本の神剣を集める事だった。
そして新宗主最初の命として、海潮は闇己に自らの首を刎ねるよう命じて…。



なんだか説明が長いせいで小難しい話に思うかもしれませんが、
物語はいたって分かりやすいです。(本編にもちょくちょく専門的な
言葉は出てくるので、免疫を高めるためにそのまま載せときます)
ごく普通の大学生が、シャーマンとしての宿命を背負った男の子に出会い、
一夜の事件に巻き込まれた結果、一緒に伝説の神剣を探していく。
そんな話です。設定は少女漫画というより少年漫画寄りですね。

特に前半は1990年代っぽい雰囲気を強く感じるので、
現代の漫画しか読まない人には、絵柄やセリフはちょっと
古く感じるかもしれません。逆に1990年代の漫画が好きな人には、
まず入口ストライクでしょう。で、男の子同士の友情が好きな人には、
さらにドストライク間違いなし。恋愛よりも友情絶対重視です。
断っておくと、本作はBLではありません。あくまで関係は「友達」です。
とはいえ作中で七地が闇己を好きだと言い切ったり、
どうにも意味深なシーンはあったりするので、BLが好きな方には、
いかようにも妄想を膨らませることは出来るとは思います。


二人のキャラ対比は面白く、七地健生はいかにも弱そうで
八方美人な人の良さが際立つ子供っぽい大学生。
でも、ここぞという時には固い決意が揺らがないし、
妙に肝が据わって動じない心の強さを持ってます。
戦ったりすることがなくても、精神的な支柱として力を発揮します。

布椎闇己の雰囲気は、見た者を惹きつける神秘的オーラと、
何者も寄せつけない暗闇を持った、大人びた高校生。
でも能力を持っていて物理的に強くても、内面は意外に脆くて、
七地の支えがないと行動がおぼつかなかったり、
暴走してしまう危うさがあります。

二人揃って一人前じゃないですけど、別々で行動してる時は
物事が大抵上手いこと進まない。それぞれ自分にない魅力に惹かれ、
悲しい宿命や襲ってくる苦境を乗り越えていくストーリーは、
穿った見方をしなくても読んでいけば、素直に感情移入できます。
他のキャラとは、物語の途中で関係性が大きく変わることはあっても、
二人の関係は出会ってから変わらず、最初から最後まで、
古代から現代まで一本の線で美しく繋がっているのです。
これが本作一番の見所だと思います。



それに加えて二人の関係性のみならず、
ちょっと行き過ぎた歪んだ感情が多く、そこが少女漫画的、
というか昼ドラサスペンスな面白さになってます。

闇己の海潮に対する妄信のような尊敬。
寧子の闇己に対する弟ではなく男として禁断の愛情。
眞前の闇己に対する実の子供故の歪んだ執着。
しをりの七地に対する恋愛観と家族への渇望。

どれも一筋縄ではいきませんし、それぞれの過程を見れば、
どうやってもハッピーエンドに納まるとは到底思えない。
読み進めるごとに、その不安を煽ってきます。
特に寧子のキャラは少女漫画でないと描けないですね。
弟が好きな姉という設定は広くあるでしょうけど、
描き方のエグさが違います。そのエグさは嫌悪感ではなく、
どうなってしまうのか目が離せない緊張感でした。
中盤ぐらいから寧子が登場するだけで、妙にハラハラしました。

それぞれの想いが最後にどうなってしまうかは、
実際に読んでみてのお楽しみなので、詳しくは書きません。
抽象的に言えば、さすが講談社漫画賞を受賞しただけあって、
どれも中途半端に終わらせてないことは確かです。
その反動か、むしろ普通の少女漫画だったら丹念に描いただろう
サブキャラ達の普遍的な恋愛があっさりになってます。
例えば夕香と布椎蒿を主役にすれば、十分なスピンオフとして
明るい少女漫画を描けるような気がしますね。


前述した通り、そもそものストーリーは少年漫画的でもあります。
男の子二人が呪いを昇華させるために神剣を6本集める目的なので、
物語のゴールは「神剣が全て集まった時」と見据えて読めます。
その過程で神剣や人を廻って様々な思惑が絡んでいきながら、
敵・味方問わずキャラが増えていく形式を取っているので、
関係はややこしくなっても、整理がつかないことはありません。
全ては剣にまつわる念の呪いか、人間の情念で説明が付くので。

少年漫画目線でいえば、「捻じれる黒髪」は
地獄先生ぬ〜べ〜っぽいような怖い話で読めるし、
「海神を抱く女」はミステリーサスペンス調で読めます。
後は単純に闇己が剣を振ってる姿は美しくカッコイイです。
全体はコメディテイストも時折入ってますが、シリアスパートは
深く突き詰めて、ご都合主義な結末にはしてない故に、
どうにも救いがない結末もあるので、少年・少女漫画と甘く見てはいけない
大人の苦みが随所に入ってるのも魅力だと思います。



全19巻(文庫だと10巻)と読み応えはたっぷりですけど、
冗長化を感じさせない面白さはたっぷりあります。
文庫本の最後には、本作を描くにあたっての参考文献が
列挙されていて、膨大な量(しかもこれで一部)に圧倒されました。
一つの作品を描くのに、こんなにも資料が必要なのかと。
いや、これほどの資料を元に描いてるから、作品に出てくる設定が
小手先ではなくストーリーの本質に馴染んでいるのでしょう。

ネタバレになるので、これも詳細は控えますが、
クライマックスの古代と現代が交錯する場面から、
最終回までの展開は息つく暇も与えない見事な描きっぷりです。
そして最後のシーン。出雲という土地とシャーマンの宿命が迎える結末。
それは少年漫画という枠でない、少女漫画という枠でもない。
『八雲立つ』のオリジナルがすべて集約されたすばらしいラストでした。

読み終えた後、時間を置いてもう1回読み返したくなるような、
最初から最後まで芯が揺らぐことない名作少女漫画でした。

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