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zoom RSS 少女漫画探訪 第28回:潔く柔く

<<   作成日時 : 2015/09/19 09:17   >>

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『僕等がいた』完読から2年、恋愛少女漫画の金字塔です。








まずはwikiより、ごく簡単な概要を転載します。

女子高生を中心とした登場人物それぞれの成長と、
日々の恋愛模様を数話完結のオムニバス形式で描いた作品。


本作は全10編からなる短編で形成された恋愛物語です。
10編は時系列順ではなく、登場人物の視点でキャラの立ち位置が
変わってくるので、1編を読み終えてしばらく時間を空けてしまうと
こいつとこいつはどういう関係なのか?をうっかり忘れて
しまったりします。少し読めば思い出してくるのですが。
一気に全部読んでしまうか、短編ごとに区切って読む場合は、
関係性だけでもちょっと復習してから読んだ方が良いです。



ACT1・由麻編は何の変哲もなく、言ってしまえばちょっと退屈でした。
女子高生が偏屈な先生を好きになる(憧れる)のは
少女漫画の世界では珍しくありません。ACT1の物語がそのまま
ACT2に繋がってるわけでもないから、1巻を読み終えた時点では
様々な恋愛話を集めただけの短編集だと錯覚するでしょう。


1巻読めば分かることなんで、さらにACT2・カンナ編の概要を転載します。

カンナとハルタは同じ団地に住む幼なじみで、「猫のキス」をする仲。
マヤ(真山)とアサミは中学の同級生。
そんな4人が高校で出会い、行動を共にする。
アサミはハルタに、マヤはカンナに密かな恋心を抱く。
高校1年生の夏、カンナがマヤと花火を見ている頃、
ハルタは交通事故で死亡する。
カンナ、マヤ、アサミそれぞれの複雑な想いが互いに交錯しあう。


ACT2から物語はグッとシリアスになります。
このACT2を読んで『僕等がいた』を思い出しました。
四角関係だったり、大切な人の死だったり、やり場のない感情だったり。
ただ、『僕等がいた』ほどには突き刺してくる場面はありません。
軽いということではなく、描き方と捉え方の違いだと思います。

ACT2だけでは、どうにも切ない幕引きになっていますけど、
最後まで読み終えて『潔く柔く』を論じるなら、こう表現します。
人は巡り合いと自分の気持ち次第でトラウマを乗り越えられる
という話です。その過程や乗り越えるにかかる時間は人それぞれですが、
着実に、ストレートに進んでいくから、『僕等がいた』のように
途端にすべてが破綻するような恐怖感は感じないのですね。

さらに2巻のACT3に続くと、ACT1の物語が蘇ってきて、
登場人物の繋がりにハッとさせられます。
そこから先は各編がそれぞれの物語を紡いでいく一方で、
どこかの道で螺旋のように交わり、やがて合流します。
誰を主役にするかで捉え方が変わる群像劇の話でもあります。



本作の魅力は、とにかく喜怒哀楽が豊かであることだと思います。
キャラの感情は、ほとんど全てセリフ(実際に言ってるか思ってる)
として表現され尽くしてるんじゃないでしょうか。
繊細な心境を間で察するより、日常の自然な言語で隙間なく
マシンガンのように畳みかけていくので、全部拾うのは大変です。
それが10編もあるのだから、誰かに感情移入できる人にとっては
我が聖典を手にしたようにのめり込んでいくと思います。

男の子が冒険だの戦いだのに胸のトキメキを覚えように、
これだけ多種多様な甘酸っぱくも女子の心をくすぐる恋愛模様が
描かれれば、女子なら誰かのエピソードには何かしら
興味を惹かれることでしょう。喜劇が好きな人も、悲劇が好きな人も、
惚れやすい人も、冷めてる人も楽しめるエピソードがあります。



個人的にはACT9・朝美編が変な話ですが感情移入できました。
恥知らず男のドン引き行為に共感したわけではなく、
年下との恋が響いたわけじゃないのですよ。
ACT2以降、物語からはじかれたような存在になっていた
朝美でしたが、ACT9で無慈悲な仕打ちとロマンの続きと、
二つを経験して、過去のトラウマを見つめ直すことになります。
最終的に過去ではなく未来を考える話が心に残りました。


キャラでは梶間が良かったです。
喜怒哀楽や感情表現が豊かな本作の中では、
不愛想で何を考えてるのかよく分からないキャラでした。
けれど、案外ストレートに物を言うし、時々皮肉を込めながらも、
ユーモアセンスがあって良い味出してるのです。
ただし、前述の四角関係に梶間は直接関わってなくて、
ACT3以降は脇役に徹しているような存在です。
それでも、ACT3のシーンが最も印象に残ってます。

梶間が高校時代に付き合っていた年上の先輩である
瑞希は東京に進学することになって離れ離れになります。
別れ際に「真剣じゃないなら来ちゃだめ」と告げます。
その後、梶間と瑞希は一度も会うこともなく6年経って
ようやく再会するも、互いに何だかそっけない態度。
6年前の関係は、幻だったんじゃないか?と思い詰めていた時、
仮面が剥がれた梶間が瑞希に言うのです。

「16であんなこと言われて、遠く離れて…行けるか?
行くには!……プロポーズするくらいの覚悟がいったんだよ」


冷血人間と恐れられていた梶間が本音で激昂した瞬間でした。
「それでも全てを捨てて迎えてに来てほしい!」と思うのは、
夢見る少女の気持ちだとは分かりますけど、
合理的にものを見てしまう男、ましてや16歳にはとても難しい。
迎えに行かないからって瑞希の事をどうでもよく考えてないことは、
行間から伝わるはずで、すごくリアルに感じた名言です。


あと、読み終えてみてから本作の裏メイン役を選ぶなら、
百加ですかね。梶間も然り、安養寺音々…というか、ふくちゃん然り、
四角関係が軸になっているけど、なんだか脇にいるキャラが
気になる漫画でした。女性だったらカンナに自己投影できる…とも、
あんまり思わないので、ヒロインなのにちょっと不遇な存在ですかね。
人気投票やったら下手したら5位にも入らないんじゃ…そんなことないのかな。



最後に勝手な推測を交えた余談を。
本作のタイトルは『潔く柔く』です。
初見で字のままに読むと「いさぎよ…あ、きよく。やわらか…やわく。
と、サラッとは読めないんじゃないでしょうか。
私はしばらく読めませんでした。「きよく」は変換しても出てこないし。

で、なんでこのタイトルにしたのかと考えてみたのですが、
恋愛での理想的な姿勢を説いてるのだと思いました。
潔い態度で柔らかく接する。言葉にするのは簡単ですけど、
実践するのは難しい。どこかで人は利己的で固い態度になるものです。
本作でも、登場人物たちは右往左往をしながら傷ついたりしますけど、
『潔く柔く』の姿勢になれた子ほどハッピーエンドになってると思います。



ということで、実は少女漫画探訪始まって以来かもしれない
「超正統派ど真ん中少女漫画」の感想でした。

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