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zoom RSS 少女漫画探訪 特別編:黒薔薇アリス(完全版)

<<   作成日時 : 2014/05/05 06:28   >>

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黒薔薇アリス(第1部)完結までの感想です。







2巻までを読んだ感想を書いて間もないですが、
6巻まで一気に読破したので改めての感想です。
本感想はかなりネタバレな言及をしますのでご了承を。
(↓未見の方は2巻までの感想を先にどうぞ)

少女漫画探訪 第8回:黒薔薇アリス


前の感想でも先の予想がつかないと書いてる通り、
3巻以降はまったく想像外の展開で進みました。
何より意外だったのは、物語が壮大にならなかった事です。
始まりの舞台がオーストリアで、ディミトリが高貴な貴族なんだから、
ゆくゆくは日本からオーストリアへ、舞台は世界的に広がっていく。
そんな展開を漠然と考えていました。

ところが、過去は描かれても舞台はカフェ『静寂館』を動かない。
ヴァンパイア達は正攻法でアリスの心を射止めようと
必死になっているばかり。アリスも自分の境遇とかそれぞれの関係に
悩んでいる節はあっても、乙女心のそれからは大きく逸脱しません。
不意に設定を忘れると、普通の恋愛漫画と錯覚すらします。


『黒薔薇アリス』の本質とは何でしょうか。
悲哀な運命に巻き込まれた平凡な女性が、
イケメン男子(ヴァンパイア)に言い寄られてハーレムを築きながら
人間の女性としての想いから一人には決めれず右往左往する物語?
いや、本当に右往左往してるのは、ヴァンパイア達や生島光哉であって、
アリス(梓)自身は感情的になることはあっても、
どこか冷静で「一人の女」として物事を捉えてる様に見えます。

誤解を恐れず言えば、女のエグイ部分を率直に描いてるのです。
そして、同じぐらい男の愚かな部分もおもいっきり描いてます
男女の違う視点の愛を包み隠さずストレートに描くことが、
水城せとな先生の根幹にある作品共通テーマかもしれません。
『脳内ポイズンベリー』では脳内会議でオモシロおかしく仕上げ、
『黒薔薇アリス』では、ヴァンパイアという幻想的なジャンルと、
悲哀な過去と運命でオブラートに包んでる違いはあっても、
どちらも悲しく面白く愚かで美しい愛の模様だと思います。
(マニアの方から言わせれば浅い考察だと思うので、
他作品も読んでる方はぜひ補足をお願いしたいですが)



前回の感想で、ヴァンパイア騎士ファンの方は、
その後のIFエピソードとして想像して読んだり、
比較して読むのも面白いと書きました。
ヴァンパイアの生死観、歪な恋愛感がねじれ合う展開を
主軸にすれば、ヴァン騎士流の楽しみ方ができるでしょう。
ですが、最後まで読んで決定的な違いを一つ感じました。

それは種族としての世界や存亡は一切考えてないことです。
それぞれが個々に悩んだり、背負いこんだりしてますが、
ぶっちゃけ考えてることはみんな利己的です。
世界がどうとか、誰と誰が対立してるとか、そういうことよりも
純粋に自分と相手の想いに向かいあってるかどうかをテーマにしてる。
それぞれの想いは歪だけど、メッセージはストレートですね。
そしてヴァンパイアが出てくる浮世離れした設定なのに、
舞台は渋谷で、テーマは恋愛で、うだうだ言ったりたいそう悩んだりしても、
事に入る時はめちゃくちゃあっさりしてるから、リアリティに溢れてます。
ヴァンパイア騎士のように、幻想ファンタジーの物語ではないのです。



以下、6巻まで読んで思ったことを
主要登場人物それぞれにコメントを添えて。


ディミトリ

結局コイツが心の底で考えてることは
最後までよう分からんままでしたね。
本人の言葉を鵜呑みにすれば、
アニエスカへの懺悔を菊川梓への愛に変えようと
葛藤しながら生きてる様なこと言ってますが…。
過去のエピソードもあって穿った見方をしてしまうし、
主役なんだけど、他のキャラよりもやや影が薄い。
最後は梓の精神に入り込む裏技みたいな手を使ってまで、
自分を選ばせたようにも。変態性と魔王性が足りない
ヴァン騎士の枢みたいな印象
でした。それただのロリワカメ…。
これぐらい脆さがあった方が親しみやすさは感じるけれど。



レオ

ヴァンパイア騎士の一条さんをフラッシュバックさせる
キャラでしたが、まさか半分(3巻)で退場してしまうとは。
何度も作中でネタにされている疑問は、
「なんでレオじゃダメなの?」ってことですね。
現実的に見れば、こんな良い優男そうはいないですよ。
どんなに良い男であっても、心が燃えがらなければ
恋や愛にはならないのか。しかし、ちゃっかり子孫を残してたり
退場後も間接的に物語に関わってるせいか、さほど可哀想な
キャラ感はなかったです。自分よりも誰かに尽くしきった
一条さんの方が不憫なキャラ度では勝ってます!(笑)



櫂と玲二

序盤は「THE 脇役」として色を添える程度の
扱いだったけど、レオ退場後はディミトリを喰う勢いで、
物語に介入してきた二人。ヴァンパイアになるまでの
サイドストーリーは簡単には詳細を記せないぐらい重たい
です。
ヴァンパイアではない人間時代の話だからこそ、
その経緯はとても生々しくて暗い気分になります。
第一部では、互いの記憶が目覚めたものの
決着が付かないままに、感情も関係もぐちゃぐちゃで終わってるので、
いっそ第二部は、この二人を主役にしても、
一作品として十分なプロットは立てられるのではないかと。
最後に玲二の顔がマクシミリアンとして映っていたのも、
何らかの伏線だと思いますがはたして…。



アリス

誤解を招く言い方をすると、男が振りまわされる女の典型
ですよね。そういう意味で、ヴァンパイア騎士の優姫
に近いですが、もっと感情的で利己的な印象です。
見た目はフワフワしてるけど、芯は強くていざとなったら
物事をはっきり言うのも、水城作品ヒロインの特徴かな。
女性読者はこういうキャラに感情移入できるのでしょうか?
男にはさっぱりきっぱり分かりません!



生島光哉

アリス誕生の踏み台キャラだと思っていたら、
まさかの再登場!感動の再会になるかと思っていたら、
心はダークサイドに堕ちていて、強引にやり込めるわ、
後日拒絶されたら最低の罵声を浴びせるわ、
櫂にぶん殴られるわ、最後は完全に決別されるわ。
最も可哀想な立場のキャラ。…のはずなんですが、
な〜ぜか、あんまり可哀想に思えない
他のキャラが人間を超越してる存在になっているだけに、
たかが人間として、どこまで物語についていけるのか。
でも、いくら梓を想っても、梓の肉体は戻ってこないわけで



最後に、ストーリーで最も驚いたのは、レオが退場したことでも
生島光哉が再登場したことでも、櫂と玲二の過去でもなく、
アリスがディミトリを選ぶことに決める直前の展開です。
ディミトリが突然出てきたちょい役キャラに
あっさり振られてだっさい姿を晒し、結局それがキッカケで
アリスと急接近するんです。あんなに重たい過去や
生死観を前にしても、後ろ向きにしか接しなかった二人が、
一方的に振られたことを笑い飛ばしたのをムキになって
想いを告白し、痴話喧嘩状態から一転して結ばれる。

なんですか、これは・・・?
ストレス溜まった飲み会で自慢したり愚痴って、
口論になりながらも意気投合したエリートリーマンとOLかよ!!

第1話からは考えられない超庶民的なオチがつきましたね。
白馬に乗った王子様へのアンチテーゼなんでしょうか。
「男はカッコつけてる内はダメ。ダサさを見せてこそよ」
というメッセージなのでしょうか。それとも、水城せとな流の
高等なギャグなんでしょうか。(ギャグで第1部が終わってるのも…)
それが分からない内は、所詮少女漫画も乙女心も
理解してないってことなんでしょうね。勉強になります!



第二部の再開、果たしてあるのか分かりませんが、
もしあるならば本誌を買う覚悟で追いかける…かもしれません。
ヴァンパイア成分やありきたりな少女漫画に飽いてる方、
ぜひお手にとって読んでみてください。
この漫画、危険な刺激はたっぷりです!

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
騎士さんこんにちは。アリス完全版ですね!
うみねこのコメントもありがとうございました。
ご指摘通りグロ過ぎたので活字にします…

アリスはほんとにどんどん話が身近になりましたね。渋谷お台場に小樽って。
全然気付きませんでしたけど、種族繁栄云々も結局は建前っぽい。
まさに、人生に疲れたオトナ達が暗い目をして深酒してるイメージがあります(笑)

私の読んだ感想を(ややまじめに)ダラダラ書かせてもらいますと…

彼らは愛する人を何よりも大切に想っていたのに、却って相手を深く傷付けたり命を奪う様な取り返しのつかない罪を背負ってしまった人達ですよね。
みんな何かをきっかけにダークサイドに堕ちてしまうし、同じ人間の心の中にも光と闇がある。

色々な出来事を通して傷付け傷付けられても、約束の最期の日までは生きなくちゃならない。
逆ハーレムの内実はそんな諦めきった罪悪感たっぷりのセカンドライフな訳で、それでもまた純粋に誰かを好きになる。

水城作品全体に言えるかもですが、みんな普通の人というかダメな人達で、王子様キャラからはかけ離れているし、○○が大好き!とはあまりならないよーな…
だから重めでも読みやすいのかも。
ミロ
2014/05/09 22:41
私もアリスに感情移入出来ませんし、あのキラキラ光哉さえもダークサイドへみごとに真っ逆さま。ディミトリも、ほんとに最低だ!と思いつつも、アリスへの気持ちは多分純粋だと思いますし憎めない…。
少女漫画的な告白だけじゃ、もう本人達も読者も簡単には信じられないから、あの裏技がある訳で。(ホントか?となってしまうのもわかりますw)

みんな不幸で、クモなんかゾッとする程気持ち悪い。普通なら読みたくないはずなのに読まされてしまうのはなんでなのか…逆にすごくありませんか?(笑)
他に私が好きな所を探してみると…
・人(男女)や世の中のきれいな部分もきたない部分も描かれている
・合間のコント、BL風味が面白い・歳を重ねる程心に沁みて来そう・双子のスイーツが魅力的

黒薔薇アリスの本質は…んーなんでしょう?
自己犠牲でさえ突き詰めたら自己満足じゃないの?
ほんとのところ…男女間で純粋な愛、無償の愛ってある?
こんな世界できれいなままでいられるの?
ってのを絵空事でなくリアルに、連ドラ風に描いてるっぽいかなと。
で作品としては、そんなの夢幻じゃない?って感じでしょうか…(^_^;
私のアリスのテーマソングは今の所、青春の輝きとかpiano manみたいな曲ですー
あと確かに水城マンガは女のイヤな所がしっかり描かれてますねw。
ラストのコマからも水城ファンの人の感想みても、まだまだ堕ちてくみたいなので((;゚Д゚)))ですが…先が読みたいです。

騎士さんは、どんなところが面白いと思いましたか?
ミロ
2014/05/09 22:47
ミロさんコメントありがとうございます。
まず先にうみねこの話を。やっぱりちょっと
グロがきつかったですか〜。ひぐらしのような
ホラー性は薄いですが、殺された方だったりは
残忍ですからね…。活字でも痛々しさはありますが、
物語としては面白いと思いますので、よろしければ!
個人的にはEP4とEP6が好きですね。

さて、黒薔薇アリスの話を。
「人生に疲れたオトナ達が暗い目をして深酒してるイメージ」
↑ああ、分かります。ファンタジーな設定だったり
大仰な目的だったりよりも、それぞれの背景にある
「本当はこうじゃない苛立ち感」を感じましたね。
1回人生が終わってるだけに、諦めてる感も含んでるけど
人とかヴァンパイアとか関係なく、生きて考えて感じる
以上は、恋とか愛からは逃れられない。みたいな。
これだけ美男が多くいのに、誰ひとりそれで良い思いを
してないのもまた壮絶です。

個人的には、まずそれぞれの会話が
ずけずけ言っちゃてるところは面白かったです。
メルヘンだったりダークだったりな雰囲気が
「それ言っちゃう!?」な会話で
台無しになるのは、水城せとな節なんでしょうけど、
好きですね。あま〜い言葉で幻惑するより
ああやってさばさばしてる方が好みな感じです。
漫画のキャラとしてなんで現実の話になると
また別ですが。(誰もお前の好みは聞いてない?)
月の騎士
2014/05/10 20:05
目をそむけたいはずなのに読みたくなってしまう。
エンターテイメントの醍醐味ですよね。
言わば恋愛サスペンスみたいなジャンルじゃないかと。
恋とか愛とかを題材にして、エグさをファンタジーの
オブラートに包んで、甘い時間を過ごしてたと思ったら
いきなりヒヤリとさせる描写の連続ですからね。

あ、そうだ。書くの忘れてました。
スイーツ描写はポイント高いですね!
あれだけはいくら状況が暗くても機嫌悪くても
がっついちゃうアリスの気持ちが分かりました(笑)


まだまだ堕ちていきますか…。一部終わりで、
一応アリスとディミトリがくっついたような
雰囲気になってますが、あれでハッピーエンドに
なるわけないですからね。双子と光哉が絡んで
まだまだ二転三転しそうな気配しかないです。

ってことで、長文な感想ありがとうございます!
水城せとな作品はまた近い内に触れる機会も
あると思いますので、今後もお楽しみに…って、
全然書かなかったり、読まなかったらつついてください(笑)
月の騎士
2014/05/10 20:05
なぜか超長文になっちゃってすいません。
恋愛サスペンス!なるほどです。アリスがお好きとは軽く衝撃でしたがキャラとしてでしたかw…もし失恋ショコラを書かれる際には男性から見た女性陣へのコメント希望です(笑)
それとジャンル違いですしもうご存知かもですが、面白そうなものをいくつか…もしもご趣味が合えばどーぞ♪
ダウントン・アビー…超高評価の英国ドラマがやっと地上波に。
スカイクロラシリーズ…森博嗣のミステリー小説です。ではでは。
ミロ
2014/05/12 00:13
ミロさんコメントありがとうございます。
いえいえ、長文もらえることはうれしいですよ!

あ、誤解を与えちゃったみたいですが、
ブログ本編に書いてる通り、アリス自体は
キャラとしても好きじゃないです(笑)
ただ、ストレートに言っちゃう事や、
さばさばした空気は嫌いじゃない。
ってな感じですね。男性から見た女性陣へのコメント
ですかー。昔なら辛辣に書くこと間違いなしですが、
少女漫画道を歩いてる今はどう思うのか。
その辺考えながら、いつか書きますのでお待ちください!
さらにおススメもありがとうございまーす!
ドラマと小説ですか。面白ければジャンルには
拘りませんので、機会がありましたら手に取らせて
いただきます。
月の騎士
2014/05/12 17:05

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