月の騎士の戯言

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zoom RSS 書評:ふたりの距離の概算

<<   作成日時 : 2014/03/08 06:43   >>

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青春は、やさしいだけじゃない。痛い、だけでもない。ほろ苦い青春群像劇小説です。







『氷菓』はアニメで見ていましたが、
シリーズ作を小説で読むのはこれが初めてでした。
『ふたりの距離の概算』は5作目に当たります。
なのに、初めて読む感覚がまったくなかったのは
同作者の『小市民シリーズ』(春期限定いちごタルト事件等)を
読んで近い作風を知っていたのと、アニメが原作にほぼほぼ
準じていたからでしょうか。文章の流れや登場人物の造形に
違和感を感じることもなく、すんなりと溶け込めました。
これ以前の物語は『氷菓』でアニメ化されていて、
抜けている話もないので、アニメを見て『氷菓』を知ってる方は
本作からいきなり読んで問題はないと思います。


本作の概説はいつものように引用。
(あらかじめ古典部シリーズの本を読んでいるなり
アニメ『氷菓』を観ているなりを前提にした概説です)

春を迎え高校2年生となった奉太郎たちの<古典部>に
新入生・大日向友子が仮入部する。
千反田えるたちともすぐに馴染んだ大日向だが、
ある日、謎の言葉を残し、入部はしないと告げる。
部室での千反田との会話が原因のようだが、奉太郎は納得できない。
あいつは他人を傷つけるような性格ではない──。
奉太郎は、入部締め切り日に開催されたマラソン大会を走りながら、
心変わりの真相を推理する!



ミステリーパートのネタバレにならない程度に言及しますが、
大日向が入部を拒否した理由については、
驚天動地のとてつもない真相があるわけではありません。
(氷菓シリーズをご存知の方はそんな勘繰りもしないでしょうか)
『学校』『部活』『友達』といった普遍的なテーマから、
互いの誤解やこじれが発展して……といった事です。

なんだか数学的で小難しい気取ったタイトルは、
読み終えると「なるほど!」と思わせられるはず。
奉太郎がマラソン大会中に他のメンバーと対話
するためにペースを変えながら走る行為も、
それまで過ごした日々を逡巡しながら、それぞれの関係と
心理を測る推理の材料も、果ては大日向が入部を拒否した理由も
『ふたりの距離の概算』に深く結びついてるのです。
「一見さんも飛びつくようなもっとワクワクするタイトルにしたら?」
なんてことは、読み終えたら言えなくなります。
氷菓シリーズでも、これがベストのタイトルではないかと。

全体の物語で推理される大きな謎は
「大日向はなぜ入部を拒否したか?」なんですが、
短章で区切られている中に、それぞれ物語と小さな謎があります。
一見無関係のようで最後に繋がっている構成は、
短編ミステリーと長編ミステリー、どちらの趣向も混じっていて
一粒で二度美味しい的な楽しみ方もできます。
モノローグで「優しいだけでも痛いだけでもないほろ苦い青春」
を感じるようなお話になってます。それは氷菓シリーズに通じる特徴で、
読後には爽やかだけど、どこか切なく広がる余韻を感じるでしょう。



さて、本作の内容から繋げて、「青春とは何か?」について、
少しばかり考えてみたいと思います。
主人公である奉太郎の人間関係は基本的に淡白で、
人づきあいが悪いわけではないが良いわけでもなく、
時代背景が現代よりもいくらか前とはいえ、
高校生にしてケータイも持っていません。

「高校生でケータイを持ってなくて悪いのかッ!!」
と、かつて同じように高校生でケータイを持ってなかった頃の
自分ならば叫びますよ。まさに「I.SCREAM」って感じで(笑)
が、現実問題として、現代の高校生でケータイを持ってないのは
対人関係でキツイ立場に置かれてしまう想像がつきます。
お金を1円も持ってないこと以上にまずいかもしれません。
私が高校生の時ですら、ケータイを持ってないのは
かなりギリギリの扱いで、いちいち弁解するのが面倒なくらいには、
奇妙に思われていたのですから。

そんな奴も、先日たったの1日間ケータイを手元に所持していない
状態で過ごした時は、えもいわれぬ不安感がありました。
高校生の自分が知ったら、幻滅したでしょうが、
生活が完全にケータイ文化に取り込まれてる証拠ですね。
まあ、実際には手元にあっても連絡が始終入るわけでもなく、
生活に支障が出たわけじゃありません。
時計代わりにも使ってるので、外にいる時の時間概念が
失われたのがやや不便だったぐらいですか。
(この世には腕時計ってものがあってだな…)



話を本書の物語視点に戻します。
奉太郎にとって対人関係は常に淡泊。
最も仲が良いはずの福部里志との仲も、
互いの家へ遊びに行ったこともなく、
学校内やその延長戦で会って話すぐらいです。
他の古典部メンバーとは一応の交流はしてますが、
クラス関係で親しい相手もいなそうな感じです。

では、折木奉太郎は人間関係に恵まれていないか?
いえ、そんなことはないと思います。
「あいつとは親友だ!」とか「この子とは恋人だ!」なんて、
声だかに叫んだりアピールをしなくても、ふらっとした時に
自然と立ち会える場所が合って、なんとはなしに
自然に会話できる相手がいる。十分じゃありませんか?
数の問題ではなく、それで心の充足が足りてるならば、
他に何を望む必要があるのか。(本人の意思に反して千反田関連で
厄介ごとに巻き込まれてはいるものの、それは交流する代償です)

奉太郎の高校生活を「灰色の青春」と称するならば、
それが理想的だとすら思いました。
あまりに熱くて火傷するような青春がいいとは思わない。
かといって真っ白な青春は希望がなくて苦しそう。
そんな人にも灰色の高校生活はおススメできますね。
というわけで、今が青春時代の方も、それが遠くに感じる方も、
『静かな灰色の青春物語』味わいたい方は、ぜひ読んでみてください。

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