月の騎士の戯言

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zoom RSS ブクログレビュー集(2011年7月分)

<<   作成日時 : 2011/07/20 10:17   >>

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今月のブクログレビュー集です。


少し前に、ブクログに「ゲーム棚」を追加しました。
現在は所持している(または購入予定の)ゲームに限り載せていますが、
その内、過去にプレイした懐かしく面白かったゲームも載せるつもりです。
特にゲームのレビューは予定していませんが、
気が向いたら書くかもしれません。

以下、7月分のブクログレビュー集です。




「黒い家」とはまた違った趣のサイコホラー。
アマゾンや神話の幻想的な怪奇と、ネットワークを通じた近代的狂気の連鎖がミックスしていて恐ろしい。
その真相は極めて科学的かつ超常的である。
しかも、これを今から10年以上も前に書かれていることに脱帽。
(若者が空虚な日常から脱するため、ネットに癒しを求める様子は現代の描写として遜色ない)

オチは二段構えになっていて、無慈悲な悲劇に落とし込めてから、
物語の設定を生かし、最後に一筋の光を描いた手法も見事。
ラストシーンの素晴らしさから、後味の悪さも感じない。
エグイ、グロイ、コワイの三拍子が高次元で揃っているので、
「黒い家」と同じく、ホラー・サスペンスが苦手な人にはきつい描写も多いが、一気読みしてしまう面白さがある。





描かれているのは紛れもない青春で、甘酸っぱさもあるのだが、
その青春が時が経つごとに呪縛になり、挙句に病化していく描写は、圧倒的な切なさに包まれている。
第1巻の「小・中学生編」では、幼い頃の一時ながら濃厚過ぎた相手への想いが、
「高校生編」では、青春を共にした相手と、居場所は離れても心は離れられない主人公の葛藤を、
それに恋する女子高生から客観視して描かれている。

主人公の男の子が、栃木の田舎へ大雪の中向かうシーンは、
個人的に馴染み深い駅や路線が使われていたので、感情移入度が高まった。






第1巻がフリになっている第2巻の「社会人編」は、日常を過ごしていても、
未だに奥底で引き摺る青春の記憶によって、社会で思うように上手くいかず、
心が消耗していく様子が描かれている。
主人公の時折見せる疲れた様子や、寂しげな様子が印象的で、
何をしている時も、誰と接している時も、普通を振舞いつつ空虚
な感じが、孤独な共感を抱かせる。
思い出の相手のスッキリした現状との対比が、「時の経過」という当たり前のラグを表している。
そして、思い出と今の二人が交わる最後のワンシーンは切なくも美しい。

漫画オリジナルの後日談は、もう1つの物語の結末になっている。
こちらは切なさよりも、思い出から現実に踏み出す一歩が爽やかに感じた。
社会で押し潰されそうに過ごしている人、かつての青春を忘れきれていない人、
どこか人と距離を置いて接している人、
甘酸っぱくも切ない物語を読みたい人にオススメ。





角田 光代
中央公論新社
発売日:2011-01-22

他人の子を誘拐し、逃避しながらも全ての愛情を注いだ、育ての母の心情と、
その子供が大人になり、過去を憎み囚われながら生きるも、その子自身が……という2章仕立ての物語。

逃避劇の展開もスリリングだが、それにも増して、子供が成長した後の状況や、心の在り方に重みを感じた。
誘拐して自分の子供の様に育てた血の繋がらない母と、
実の子に排他的な感情を抱き、自分の子供として育てられなかった本当の母。
どちらの母にも複雑な嫌悪の感情を持ち、過去を背負って少女が揺れ動きながら生きる様は、
健気ながら悲哀にも満ちていて、感情移入をさせられる。
ラストシーンは美しく、タイトルも意味深で良い。

それにしても、この本に出てくる男はどいつもこいつも、あまりにも酷い。
しかし、それに男として抗議したい気持ちはない。なぜなら男の愚かな部分を、
言い訳不能にきっちり描かれてしまっているからである。

映画化もされていて、評判も良い様なので、機会があれば観てみたい。





下ネタ爆発だが、不条理ではなく、
ブラックなシーンもあるが、全編的にギャグとして収めているので、
女子高生でも笑って読める作品だと思う。
探偵が悪魔を使って依頼解決するという軸のストーリーがあり、
出てくる悪魔達も、見た目はコミカルで可愛らしい。
しかし、1巻に出てくる悪魔の性質を見ると、
セクハ○、スカト○、女性○視、メンヘ○気味の嫉妬と、
それぞれにクセがあり、その力はやはり「悪魔」である。

また、人間側のキャラも立っている。
悪魔よりも悪魔らしい、探偵アクタベさんと、
その助手で作品のヒロインだが、それらしい扱いは受けず、
ギャグ漫画としては正しく汚れていくサクマと、
悪魔たちの絡みも、時にほのぼの、時にギスギスしていて面白い。
個人的には、サクマのようなギャグマンガに
順応した女性キャラは、すごく良いと思うのだが、
この作品の様な扱いには賛否両論あるかもしれない。





貴志 祐介
文藝春秋
発売日:2010-07-29

この本を自分が高校生の時に読んだとしたら、
より恐ろしく、そしてより面白く感じたのではないかと思った。
なので、ホラー・サスペンスに、ある程度の耐性と興味が有り、
自我と自制心を持って、現実と空想の区別が付く高校生には、超オススメの作品。
それ以外の人は、身も心も大人になるまで読まない方がいいかもしれない。
それぐらい、この作品の物語は刺激が強い。

上巻の大筋としては、授業は楽しく、トラブルを次々に解決してくれる、
先生にも生徒にも人望のある「理想の良い先生」である蓮実が、
知能、情報、人心掌握術を使って、己の欲望を満たし、
邪魔者を排除していく。最初から異常なのではなく、
徐々にその本性を現し、行動や存在がスケールアップしていく展開は、
圧巻で恐ろしくも、引き込まれてしまうゾクゾク感がある。
また、上巻の内容は、ホラー・サスペンスだけではなく、
ミステリーとしても成立している、先の展開と謎を読む面白さがある。

蓮実の欠点は、作中にて「他者への共感能力がない」と
説明されているが、大小があれ共感能力の欠如を
持っている人は少なくはないだろう。私も共感出来てしまう点はあった。
(共感できないことに共感するのも皮肉で不可思議な話だが)
しかし、蓮実が常人から極めて逸脱しているのは、
自分の思考が「可能」と判断すれば、それが殺人という手段であっても
何の躊躇いもなく(一部例外はあるが)、即実行に移す点である。
そんな蓮見による善悪の判断基準の異常さによって、
恐怖のサイコパスは生まれ、作品の怖さに繋がっている。





貴志 祐介
文藝春秋
発売日:2010-07-29

下巻は、上巻に比べて、ミステリー色は消えている代わりに、
よりバイオレンス色が高まった凄惨な物語となっている。
個人的には上巻の方が、蓮実の狡猾さが目立って面白かったが、
下巻でも、一気に読破してしまう怒涛の展開に引きつけられた。

最後の逆転劇は、流れからある程度の想像は出来たが、
緊張感は全く途切れず、終幕が近付くにつれ高まる一方だった。
エピローグは、現代の凄惨な事件に対してのメッセージを
含んでいるようにも感じられ、またホラー・サスペンスの
テイストを保ちつつも、ひたすら悪いだけの後味には感じなかった。

起こっている事件は「凄惨」の一言だが、
主人公であり、サイコパスである、
蓮実の普通ではない思考回路による視点と発言は、
ある種のユーモアになっている節もある。
蓮実にとっては、命を賭けた緊張感のある殺戮ではなく、
自分の思考に従って遂行する「ゲーム」に過ぎないが故に、
蓮実の言動からは最後まで緊張感は感じられず、
それが逆に恐怖の緊張感を煽るポイントになっている。

最後に余談だが、作中で格闘技に関する造詣深い表現もあったので、
ニヤリとしてしまった。「UFC」という単語が、
世間一般にどれほど馴染みがあり、伝わったのか分からないが、
個人的には作品への感情移入が高まった小ネタの一つである。
他には、「死亡フラグ」に関する記述もネタが分かると面白い。





最近は、貴志祐介氏の作品にハマって読んでます。
その中で、「悪の教典」の特に上巻は、2011年の今まで読んだ本では、
ベストに面白かったです。ミステリーというジャンルからは若干外れてますが、
(といっても同書は2010年のこのミス1位にも選ばれているのですが)、
ホラー・サスペンスを読むには、今が良い季節かもしれませんね。

それではまた来月。

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